まずは前回の解答・解説から。
赤血球、白血球、血小板いずれも低値であることから汎血球減少を呈する疾患が想定される。白血球の分画では異型リンパ球がみらていることからウイルス感染が存在している可能性がある。また、特徴的な所見としてフェリチン高値があり、フェリチン高値を呈する疾患として国家試験的には血球貪食症候群、成人Still病、ヘモクロマトーシスが鑑別に挙げられる。すなわちフェリチン高値と汎血球減少から血球貪食症候群が最も考えられる。これらに加えて、左肋骨弓下に脾を2cm触知することから脾腫の存在が、そして肝酵素高値から肝障害の存在が疑われ、これらも血球貪食症候群を支持する所見である。以上から、ウイルス感染に起因する血球貪食症候群を考える。
a.NBT色素還元検査陰性である →間違い。NBTは活性酸素によって青変し不溶性に還元される。NBT色素還元検査陰性ということは活性酸素(−)を意味し、これは好中球などの食細胞が活性酸素を産生できない疾患である慢性肉芽腫症で特徴的な検査所見である。
b.部分的白子症を認める →間違い。部分的白子症はChédiak-Higashi症候群で特徴的な所見である。
c.骨髄穿刺が必要である →正しい。骨髄血塗抹標本でマクロファージによる血球貪食像がみられるかどうかを調べる必要がある。
d.酢酸デスモプレシンが第一選択である →間違い。これはvon Willebrand病の治療法である。
それでは今日の問題。
6歳の男児。発熱を主訴に母親とともに来院した。10日前に家族で東南アジア に旅行に出かけ5日前に帰国した。4日前に発熱と咳、鼻汁、眼脂および口腔内の粘膜疹が出現した。昨日から高熱となり皮疹も出現したため受診した。意識は清明。体温 39.9 ℃。両側の眼球結膜は充血し、咽頭に発赤を認める。両側の頸部に径 1 cmのリンパ節を数個ずつ触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 455 万、Hb 12.7 g/dL、 Ht 35 %、白血球 3,300(好中球 63 %、好酸球1%、好塩基球0%、単球8%、リン パ球 28 %)、血小板 20 万。血液生化学所見:AST 12 IU/L、ALT 35 IU/L、LD 446 IU/L(基準176〜353)。CRP 0.8 mg/dL。咽頭ぬぐい液迅速検査:アデノウイルス陰性、A群 溶連菌陰性。皮膚の写真を別に示す。
この疾患について誤っているのはどれか。
a.皮疹消退後は色素沈着を残す
b.ツ反陰性化がみられる
c.5類感染症で7日以内の届け出が必要である
d.病原体が脳神経に潜伏感染することがある
参考問題は110G50
→https://minkore.com/bbs_view/110_7_50
解答・解説は次回。