正答率8割問題作ってみた-54 消化器 《肝炎》

まずは前回の解答・解説から。

腹痛や右下腹部の違和感より、虫垂炎や憩室炎、胃腸炎など胃腸疾患が想起される。歩行すると足の付け根が腫れるというエピソードから鼠径ヘルニアが鑑別疾患にあげられる。横になると痛みが軽減するのは、鼠径ヘルニアで脱出した腸管が臥位で腹腔内に戻ったことによるものであろう。身体診察で、臥位で腹部は平坦だが立位で鼠径靭帯より頭側の鼠径部に膨隆が認められるというのも鼠径ヘルニアを示唆し、さらにその膨隆が楕円形の膨隆であれば鼠径ヘルニアの中でも外鼠径ヘルニアである可能性が高いといえる。症状から鼠径ヘルニアを疑う場合、ほとんどの場合は身体診察のみで手術の適応を決める。

a. 腹部CT検査が不可欠である ⇒間違い。確かに腹部CTを行う場合もあるし、近年では腹臥位の腹部CT撮影を行うことも多いが、手術適応を決めるうえで重要なのは身体診察であり、画像診断は必須ではない。(私が臨床実習で見た症例でも、CTは撮っていませんでした!)

b. 自然治癒は期待できない ⇒正しい。鼠径ヘルニアは原則として手術が必要である。成人にはメッシュを用いたヘルニア修復術などを行う。

c. 腸管は内鼠径輪を通る ⇒正しい。膨隆の形状から外鼠径ヘルニアの可能性が高い。外鼠径ヘルニアのヘルニア門は内鼠径輪である。ちなみに内鼠径ヘルニアは半球状の膨隆を触れ、ヘルニア門はHesselbach三角である。

d. 女性より男性に好発する ⇒正しい。外鼠径ヘルニアは乳幼児期の男児と壮年期以降の男性に好発する。内鼠径ヘルニアの好発は中高年男性であり、女性に好発するヘルニアは大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアなどである。

それでは今日の問題。

35歳の男性。黄疸を主訴に来院した。1週間前から全身倦怠感を自覚していたが、2日前に家族から眼の黄染を指摘されたため受診した。1か月前にシカ肉を焼いて食べたが一部生焼けであったという。意識は清明。身長174cm、体重70kg。体温36.5℃。脈拍76/分、整。血圧128/76mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。肝を右季肋部に2cm触知する。脾を触知しない。血液所見:赤血球451万、Hb13.8 g/dL、Ht44%、白血球4,600、血小板21万、PT-INR1.0(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.3 g/dL、総ビリルビン4.5mg/dL、直接ビリルビン2.2mg/dL、AST406U/L、ALT498 U/L、LD426 U/L (基準176~353)、ALP486 U/L (基準115~359)、γ-GTP 134 U/L (基準8~50)。免疫血清学所見: CRP 1.0 mg/dL、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。腹部超音波検査で肝は腫大し胆嚢は萎縮しているが、胆管の拡張はみられない。
この疾患について誤っているのはどれか。

a. 劇症肝炎の原因になる

b. 治療は経過観察でよい

c. 致死率はA型肝炎より低い

d. 健常人なら慢性化しない

参考問題は112D34

→https://minkore.com/bbs_view/112_2_34

解答・解説は次回。