ほくと先生ってどんな人?精神科診療の極意【2/4】

前回はみんコレ誕生の経緯についてのお話でした。
今回は精神科医として心がけていることを伺いました。

精神科の魅力

-精神科が面白いなと思ったのはいつ頃だったのですか?

ほくと先生 実習の時、初診の外来に同席して実際の患者さんを診てからだと思います。精神科というのは病気を治すのが真の目的ではないんです。病気を治すというのは手段であって、真の目的はその人の人生が豊かになる手伝いをするということなんですね。

精神科ほど、その人の人生を理解した上で診療にあたる科はないと思います。どこで生まれて、どこで育って、どんな家族構成で、どんな仕事をしていて、どれくらいのお金をもらっているかまでわかった上で診療していて、それが面白いのだと思います。

―精神科には、どんな患者さんが来るんですか?

ほくと先生 近年、精神科に通院している患者さんは増加していて、僕が知っている最新の情報では日本では400万人くらい受診しています。

気分障害、うつ病、双極性障害から、統合失調症、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害、パニック障害など、あとは物質依存の人たちがいるのと、病気とは呼ばないけどパーソナリテイーに障害がある人も来ます。認知症も妄想や幻覚といった精神障害が伴っていると精神科が診ますし、小児の発達障害も守備範囲です。

-どのように支援するんですか?

ほくと先生 医師が唯一できることは診断をしてあげることです。つまりどこまでが病気のせいで、どこまでが本人のせいなのか、病気自体の特性についてや症状、治療法、経過など本人の判断材料になる事実を説明します。その上で、本人や家族がどう判断するかは本人たちに任せてあげるということです。ここで大事なことは、

自分の責任と患者さんの責任、そして患者さんの家族の責任をきっちり分けて考えてあげなくちゃいけないということです。

発症の原因と薬の開発

―うつ病や双極性障害はどのような原因で発症するのですか?

ほくと先生 病気の原因について考えると、遺伝要素は一つあります。そのうえで、本人の考え方の特性というのもあるでしょう。そして、本人の置かれている環境とかあるいはストレスとかも影響するでしょう。それらが関わりあって病気ごとに特色が変わってきます。

―精神科医領域の薬の開発、研究はどのように行われてますか?

ほくと先生 まず、医学生も含めて一般の人が勘違いしやすいのは、医学は人間の仕組みについてきちんと解明はしていないということなんですよね。解明はしていないにも関わらず、治療法は見つけているというのが正しいと思いますね。つまり、極論を言うと、実際にその治療を行なって、効果があると判定されれば、治療法として確立します。特に精神科は、厳密に仕組みがわかっていないにも関わらず、治療を行っているという側面が強いです。

―患者さんごとに薬の効き目に違いってありますか?

ほくと先生 それはあると思います。人間は、実験動物などと違って個体差のバリエーションの幅が大きいし、その人の社会的背景や心理的状況まで考慮したら、同じ病気でも、起こっている現象はばらばらです。それから、例えば、抗うつ薬と分類されている薬にもたくさん種類があって、それらの効果がそこまで大きく変わらないので、結局、個体差の方が大きくなってしまうことが多いんだと思います。

診察の際の心構え

―精神科で患者さんを診察する時、まず何に気をつけてますか?

ほくと先生 患者さんは困ったことがあるので助けてほしくて、病院に来ていますが、必ずしも、病気だと思って来ているわけではいません。ですからなぜそのような困りごとが生じるのかを傾聴し、診断をつけることがますやるべきことです。そのうえで、それを伝えるかどうかも含めて、一緒に解決策を考えていきます。

―仕事で大変なことは何ですか?

ほくと先生 医師は、困っている人に対して解決策を提示していく仕事なので、その内容が、分かりづらいことも往々にしてあるし、わかったらわかったで解決しようのない問題もあります。そういう時は、知識や技術だけでは仕事は進まず、支援チームのマネージメントなど、難しい判断をリーダーシップを持ってやらなくてはいけないので、医師の仕事は大変です。人を相手にしているからこそ、しんどいけど、だからこそやりがいはあります。

-精神科で緊急で入院するのはどんな時なんですか?

基本的には予定で入院できる人は予定入院するので、緊急性の高さは、待てるかどうかになります。その日じゃなきゃダメという事態、端的に言えば、自傷他害の恐れがあるときです。

-働いててよかったなと思うときはどんなときですか?

ほくと先生 それはいっぱいあります。

まず、精神科は若い人を助けられるので、非常にやりがいがあります。また、感謝される場合、依存症の人を治療して感謝される場合が非常に多いです。本人諦めてる場合も結構多いので、見放すのはすごい簡単なんですけど、根気よく接して、うまく依存症から抜け出すと人生変わるんです。そういうとき、依存症の治療していてよかったと思います。

-人生変わるってすごいですね。

信頼関係を築くには

-患者さんの信頼を築く上で心がけていることはあるんですか?

ほくと先生 これは人間関係全般に言えることなんですけど、信頼関係がある人から言われた言葉と、信頼関係がない人から言われた言葉は同じ意味でも説得力が全然違うんですね。今、残念ながら精神科の患者さんって増えてきていて一人あたりの医師が診る患者さんって何百人という人数になってしまうんですね。そうすると一人一人の患者さんにかけられる時間が減ってしまいます。当然、治療や診察の精度も下がってしまいますが、さらに信頼関係を構築するチャンスも失われてしまうということになります。そうなると、頑張って治療を続けていてもこっちの言葉がうまく届かなくなってしまう。

なので、どこに時間をかけるかなんです。一番大事なのは、最初なんですよ。最初がうまくいくかいかないかでその後が全然違う。最初に信頼関係ができていれば、たとえ、忙しくてうっかりミステイクをしても、謝罪をすれば、たいていは、誠意が伝わって、基本許してくれる。信頼関係がないと、こっちがいくら誠意を持っていたとしても、それを悪意だと思われたら、取り返しがつきません。もちろん、誰に対しても誠意をもって診療をするわけですが、相手の受け取り方で、治療がうまくいくかどうかが変わってしまうので、やはり、当たり前だけど、最初が肝心だと思います。

-具体的にはどのような方法があるのでしょうか?

ほくと先生 初診の患者さんが来た時に、まず相手の話を全部聞きます。話を聞くときの原則は相手の意見をまず一旦受け入れることです。これは普段の人間関係を円滑に進めるときにも重要です。

例:「昨日友達とけんかしちゃって……」と言われたら

自分にしてみれば、関係ないことではあっても、

「ああ。そうなんですね。大変だったんですね。」といったん受け取る。

けんかしたことに対して同意しているわけではありません。そうではなくて本人がそのことに対して困っている、ということに対して共感してあげるわけです。

彼はけんかをしたという事実を伝えたいわけではなくて、基本的には何に困っているかを話したいはずので、それについて話し出せるよう受け入れてあげます。

―共感して聞いてて、感情移入して疲れるということはあるんですか?

ほくと先生 共感していると言っても相手の意見に合わせているわけではなく、相手の意見を相手の意見としてそのまま受け入れているわけで、自分がそう思っているわけではないのです。自分の意見と相手の意見は違うけれど別にそれでいいと思っているわけで、感情移入して疲れるってことはないと思います。もちろん、ちゃんと話を聞いてあげるには、根気が必要なので、そういう意味では疲れますね。

むしろ、信頼関係が破綻してしまうと、ちゃんと気持ちが伝わらないし、お互いに、攻撃的になってしまい疲れます。やはり、自分の意見は一旦置いておいて、信頼関係を構築した上で、それぞれの立場で伝えたいことを言う関係を築くことが重要です。

Profile
ボストン生まれの吉祥寺育ち
東北大学理学部を中退後、山梨大学医学部卒業
精神科医師×みんコレCEO×産業医として活躍中